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s┃e┃l┃e┃n┃i┃g┃h┃t 0000年00月00日発行
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vol┃000┃
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ウィル&怜司 「トリュフ」
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プラス月のSSをお送りさせて頂きます。
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ウィル&怜司くん 夜空の後くらい
トリュフ
キッチンに立っていた比奈子はクローバーの鳴き声で怜司が学校から帰ってきたこ
とを知った。
「クローバー!クローバー!クローバー!」
怜司の涙声に比奈子は苦笑する。
目が見えるようになり、三学期の間、無遅刻無欠席を条件に中学卒業を約束された
怜司は毎日、毎日、屠殺場に引かれていく牛のように首をたれて学校に通ってい
た。どれだけ学校が苦痛のところかは朝の姿と、帰ってきてからの大泣きで想像す
るまでもなかったが、イジメに合っているというワケではないようなので、文孝と
も相談して怜司が行きたくないと言うまで黙っていることにしていた。
まだ、うまく人と接することが出来ない怜司が学校に行くのは、比奈子たちのた
め。学校に怜司が行かないと迷惑をかけると思っているから、毎日、毎日、勇気を
振り絞って学校に行っている。
「ただいま」
キッチンに顔を覗かせた怜司は比奈子の想像どおり、黒目勝ちの目に涙を、いっぱ
い溜めていた。
「怜司くん、お帰りなさい!今日も頑張ったね!ギューしましょう!」
「ふぇ・・・」
ギュッと抱きついてくる細い体を比奈子は抱きしめてやる。
「いい子だったね・・・今日も一日、頑張れたね」
「・・・比奈子さん・・・」
クローバーの前でも盛大に泣いたはずなのに、比奈子の前でも、ひとしきり盛大に
泣く怜司は涙でしか自分を表現することが出来ないのだ。
奇跡的に目が見えるようになっても、傷ついた心が完全に癒されたわけではないこ
とを怜司の涙は教えてくれる。
「さあ、ご褒美よ!お口開けて!」
無防備に開けられる怜司の口の中で比奈子は作っていたトリュフの原型を入れてや
った。
「おいしい?」
コクンと頷く怜司の頬にキスをして、比奈子は笑った。
「ね?怜司くん、今日はバレンタインデーよ。愛するウィルに怜司くんもチョコ作
ってあげない?」
「ひっく・・・・作りたい・・・」
「いい子ね・・・怜司くん、まずは泣き止んで、服を着替えて、それから、手を洗
ってきなさい」
「ひっく・・・」
しゃくりあげる怜司の体を、もう一度、ぎゅっと抱き締めてやる。
「ウィル・・・あと30分で帰ってくるの・・・」
「あらあら、それは、たいへん!怜司くん、走るのよ!」
ウィルの予定は分刻みで覚えている怜司の言葉に比奈子は笑いを堪えきれずに、満
面の笑みを浮かべた。
涙を手の甲で拭いながら、部屋へと走っていく怜司の小さな後ろ姿は比奈子の心を
温かくしてくれる。
純粋な、比奈子が無くしてしまったモノを怜司は持っている。
傷ついても穢れのない、キレイな魂を持った怜司は、比奈子に、やさしさを教えて
くれる。
「比奈子さん・・・」
「用意できた?」
「はい!」
「では、上手に出来るように比奈子さんの魔法のエプロンを貸してあげましょ
う!」
「わーい!」
たっぷりレースのついた白いエプロンを、うれしそうに着ける怜司にイタズラが過
ぎたかなと比奈子は少し思って、また、笑いが込み上げる。ウィルに見つかった
ら、怜司をオモチャにすると言って怒り出すかもしれない。
「芯になるチョコレートのホールは出来てるから、この丸いチョコにボールの中の
溶けたチョコレートを手で塗っていくのよ。ワザとガタガタにするの。大好きな人
のことを思い浮かべて、手の中で転がすのがコツよ」
二人でトリュフの最後の工程をしているウチに怜司の顔が曇ってきた。
比奈子が作るものよりも、明らかに一回り大きい。溶けたチョコレートをすくうス
プーンが比奈子のは木の専用のモノだが、怜司のは普通の大振りのモノを使ってい
る為なのだが、涙目の怜司が、あんまり、かわいいので、比奈子のイタズラ心が頭
をもたげてきた。
「怜司くん・・・ウィルのこと大好きなのね・・・怜司くんの気持ちの大きさ分、
トリュフが大きいのね」
両手が使えずに鼻をすすっていた怜司の頬がサクラ色に染まる。
帰ってきたウィルが、怜司から渡されたトリュフと言葉に感激する姿は、比奈子に
イタズラの成果として満足の笑みを浮かべさせることになった。
「ウィル・・・あのね・・・僕、ウィルのことばっかり考えてトリュフを作ってた
ら、とっても大きくなっちゃったの。ウィルのこと大好きすぎて、大きくなっちゃ
うんだって・・・・僕・・ウィルのこと大好きだから、普通の大きさのトリュフ出
来ないの・・・・・・比奈子さんのみたいに上手に出来なかったけど・・・食べて
くれる?」
fin
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次回予告
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□編集:kouseki
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