まぐMM
サイエンス・メール サンプル
ID:P0003148
 

__これはサンプルです__________

サイエンス・メール
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== Science Mail ==================================== 2005/07/07  Vol.001 ===
                                    Science Mail HOMEPAGE
                      http://www.moriyama.com/sciencemail/
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◆Person of This Week:
【杉田陽一(すぎた・よういち)@産業技術総合研究所 脳神経情報研究部門 
                 認知行動科学研究グループ グループリーダー】

 研究:高次視覚機能
 
 参考になるウェブサイト:
 *産総研のリリース:乳幼児期の視覚体験がその後の色彩感覚に決定的な影響を与える
  http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2004/pr20040727_2/pr20040727_2.html

 *AIST TODAY:「色」の獲得 色を創り出す神経回路の発達
  http://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/aist_today/vol04_11/p20.html
	
 *産総研のリリース:脳は音がどのくらいの早さで進んで来るか正確に知っている 
  http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2003/pr20030227/pr20030227.html

 *科学技術振興機構:見えないものを見る仕組み
  http://www.jst.go.jp/pr/announce/20000301/bessi2/kadai9.html

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○夕焼けの下でも昼の燦々と照りつける太陽のもとでも、緑は緑、黄色は黄色に見え
ます。白熱灯の下、蛍光灯の下でも同じです。ですが光源の色の成分が変われば反射
光も変わります。実際に、カメラではホワイトバランスを取らなければ、色を綺麗に
撮影することができません。それでもなかなか色の再現が難しいことは、カメラを扱
う方ならばよくご存じのところかと思います。ところが私たちの脳は、それを苦もな
くやってのけています。脳はどのように色を補正しているのでしょうか。
 脳は現実を知覚するために、どのような処理をやっていると考えられるのでしょう
か。サルを使った実験を行っていらっしゃる杉田先生に話を伺いました。(編集部)

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[01: 脳の中には、どういう情報処理素子が必要なのか]
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■どの話からしましょう。

○やはり、いまやってらっしゃるお仕事から伺いたいと思います。

■今は脳が発達していく経過を調べています。情報処理のやりかたを脳のなかに組み
込んでいく、神経回路ができあがっていく経過を調べています。もちろん出来上がっ
たものを調べることも可能なんですけど、もともとあったものなのか、作り上げてい
くのか。
 それと、もし実験的に、たとえば皮質性の色盲であるとか、皮質性の運動障害であ
るとか、そういうようなものが作れたならば、正常な動物と比較することによって、
情報処理に何が必要なのか。どういう情報処理の素子が脳の中に必要であるのかが明
らかになると思うんですね。

○なるほど。

■ただ問題なのは顔細胞であるとか、特定の人にだけ応答するとか、特定の表情にだ
け応答するといった細胞がたくさん含まれています。それが大人になってからいっぱ
い見つかるわけで、子供にはあまりない。それで、どの細胞がそういうふうに変化し
くのかということはやっぱり難しい。でも、どの細胞が欠けていたからこういうこと
ができなくなるということは調べることができるのではないかと。

○「どの細胞が欠けていたから」とは……?

■たとえば細胞の運動特性を調べるときに、運動視でも、右から左にものを動かした
ときだけに反応する細胞がある。また、真ん中をとめておいて、背景だけを左に動か
してやると、相対的には右に動いたように感じますよね。そのような動きに応答する
細胞とかがあるから。
 生まれてから動きを見たことのないサルですと、「動き盲」のサルになるわけで
す。その猿たちは運動を、目の前で動いているものを、ピックアップする能力が正常
なサルに比べて圧倒的に劣っています。
 それで、どのような細胞が欠けているのか、あるいはまったく働かない領野もでき
あがってくるのかというようなことですね。

○なるほど。でも欠けている部分を見つけるほうが難しそうな気もするんですが。

■だいたい、動きにだけ特異的に反応する細胞がある場所にはごそっと固まっていま
すから、MRIでもPETでも、それがあるかないかは簡単に分かります。
 それでごそっとある場所がわかったら、実際に電極を刺してみて、100個200
個の細胞の応答特性をみれば、正常な動物の細胞とどういうふうに違っているのか調
べられる。分布が違うのか、それとも質的に違うのか明らかにできるわけです。

○細胞の反応選択性がどんなふうに違うのか調べてやると。

■選択性がまったく消えているとか、あるいはそこに入っていく入力がそもそも消え
ているとか、まだやっていないので何とも言えないけど。

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[02: 恒常性の知覚]
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○その入り口の一環が、色の感覚の話ですか。

*産総研のリリース:乳幼児期の視覚体験がその後の色彩感覚に決定的な影響を与え
る
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2004/
pr20040727_2/pr20040727_2.html

*AIST TODAY:「色」の獲得 色を創り出す神経回路の発達
http://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/aist_today/vol04_11/p20.html

具体的にはどういうものなのか教えて下さい。

■色だけに限ったことではなくて、明るさでもものの大きさでもかまわないんです
が、網膜に入った物理的な刺激、色の場合は波長であるとか。そういうものとはまっ
たく無関係に脳が概念を作っていくということなんです。

○はい?

■たとえば、夜中、こう歩いていますね。街灯が遠くまでずっとあると。遠くにある
街灯は、距離が倍だと明るさは1/4になるはずなんです。ところがそんなふうに感
じないですよね。

○ああ。そうですね。

■同じ明るさの街灯がずっと続いているように見えますよね。本当は目に入っている
光は弱くなっているはずなのに、脳が補正するわけですよ。

○なるほど。

■ものの大きさも同じで、10mの距離にいる人と、20mの距離にいる人がいた
ら、顔の大きさはずっと小さく感じてもいいはずだけど、我々はそんな判断しません
よね。
 それが「恒常性」っていうんですけども、色も同じで、蛍光灯の光の下で跳ね返っ
てくる光の性質を調べる、夕焼けの下での反射光を調べる、それから懐中電灯をあて
たときを調べると、まったくスペクトルは違うわけです。だけどね、人は色を見分け
られる。
 もちろん間違うことはありますよ、魚のいきの良さとか、ピンクの微妙な違いと
か。でもおおよそにおいて、ピンクはピンク、赤は赤、っていうふうに判断しますよ
ね。だけどそれを色んな照明下で見るとまったく違ったものなんです。でも赤は赤、
緑は緑。それが結局、脳の働きだということなのです。
 
○知覚と感覚の違い、みたいなところですね。厳密な意味での。外界の情報をそのま
ま知覚しているわけではないと。
 具体的にはどんな実験なんでしょう。単色光のもとでサルの赤ちゃんを育てるわけ
ですよね?

■そうです。そうすると、色は見えないわけです。濃淡しか分からない。それで、い
ろんな色紙を使いましてね。赤が出たときだけ、反応する赤以外だったら反応しな
い。そうしたらジュースがもらえるようにトレーニングするわけです。

○はい。

■その色紙を照明する光の波長を変えると、単色光で育てたサルは、緑が強いと緑、
黄色が強くなると黄色だと判断します。

○ん?

■要するに照明の……

○……反射してる波長をそのまま判断しちゃうということですか?

■そう。そのまま判断するようになるということで、そういう意味では「正しい」ん
だけど、我々は波長で判断しろと言われてもできないんですよ。

○ええ。カメラとか機械じゃないと無理ですよね。オートホワイトバランスができな
くなるということですよね。

■そうそう。そういうことです。

○先生方の出したリリースは拝見しました。以前はホワイトバランスというか恒常性
を保つ機能は生得的であるということだったんだけど、発達過程のなかで環境がキー
ファクターとして重要である、ということだったんだと思いますが。

■ええ、あのね、もちろんホワイトバランスもそうなのですが、網膜にRGB、3つ
の異なった受容細胞があって、それがカラーテレビの3つのRGB、赤、青、緑とほ
ぼ対応しているんですね。だからそこの演算で色はできるのです。
 ホワイトバランスそのものはね、カメラの場合は視野全体をやっちゃうわけなんで
すが、網膜の場合、「中心周辺機構」といって、同じ灰色でも、バックグラウンドが
黒いとより白く明るく見えて、背景が白いと黒っぽく見える。そういうのがあって、
カラーのほうもそこで行われていれば、全体的にはホワイトバランスとったのと同じ
になるんじゃないかとも考えられますよね。

○んん……。

■ローカルな、局所的な判断がたくさん行われていて、そこでやっちゃうんじゃない
かという話があったんですが、どうも、そうではないらしいという話なんですね。

○ふむ。どういうことなんでしょう。そのへんの話を伺いたいと思います。

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[03: 脳は逆光学で色の計算をする]
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■我々の実験の話をしますが、網膜の光受容細胞が休まないように、一種類の単色光
だけじゃなくて数種類の単色光をランダムに、1分おきに変えて照射していますか
ら。

○ああ、なるほど。つまり……

■そう、だから網膜の光受容細胞は全部生きているはずなんです。そして波長の弁別
もできているんだけど、実際に我々がいっているような意味で「色」を見ているんじゃ
ないと。
 色っていうのは言葉にするのが非常に難しいんですよね。それで、長波長、中波長、
短波長、と3種類の光源を用意したと。

○はい。

■テレビの画面で白い色が見えますよね。短波長、中波長、長波長、それらをうまく
混合すると白に見える。白色光に主観的には一番近いわけですが、そこで赤い色を選
択するように訓練するわけです。
 そこで今度はバランスを崩してやるわけです。光の照明光の強さを変えてやる。そ
うすると目に入る光の強さが変わりますよね。それでも我々は赤は赤だと感じる。と
ころがこのサルはそういうことはできないと。

○ふむ。

■この場合には、ちょうどその、たとえばこう、長波長の光があたって目に入ると。
長波長のほうから、ある単位、たとえば4カンデラ。中波長から4.5、短波長で1
だけ入るとする。そうするとその紙は緑に見えたと。

○はい。

■今度は黄色です。長波長が9、中波長が5、短波長が1と。こうなっているわけで
す。

○はい。

■そこで、さっきの緑のほうの、長波長をどんどん強くする。9になるまで強くする
と。中波長はほんのわずか、5になるまで強くすると。すると目に入ってくる光の成
分、緑の色紙から目に入ってくる光の強さは……

○さっきの黄色に近くなるわけですね。

■そう。ところが我々は緑だと判断するわけです。しかし、このサルたちは黄色と判
断してしまうわけですよ。

○なるほど。まあ、ある意味で「正しい」わけですね。

■うん、でもそういうふうには見えないのですよ。ノーマルなサルは、正常な環境下
で育ったサルは、光の強さを変えても、やはり緑だと判断するわけです。

○なるほど。以前僕はテレビの仕事をしていたんですが、どうして人間はホワイトバ
ランスを合わせなくて大丈夫なんだろう、というのが素朴な疑問とあったんですよ。

■これはどうも、カメラがやっているホワイトバランスとはちょっと違っていてです
ね。
 まず照射光の成分を計算すると。それは目全体に入ってくる光の波長成分−−もっ
と簡単に言えば、RGBの3種類のバランスですよね。それをまず演算すると。

○はい。

■その次に物体の反射率を計算する。

○ああ、なるほど。逆光学をするんだ。

■そうです。その反射率の計算で、どうやら色の認識を行っている、らしい。という
ことなのですね。

○それはどのへんで処理されているんでしょうか。

■えっとねー、候補地はいくつかあるのですけど、決定打はまだない。

○どのへんだと?

■人間でいうと、後頭部のちょっと前より。そのちょっと奥のあたり。サルの場合だ
と耳の後ろあたり。
 それから、皮質性の色盲の患者さんがいらっしゃいますよね。脳の損傷で色だけが
見えなくなった方。それもいくつかの場所で起こるのですが、それもやっぱり、後頭
部を含むような領域なのですが、実際に確実にここだっていう証拠はまだ上がってな
い。

○なるほど。
 サル、あるいは僕らも、育つというか発達の過程で、長波長から短波長までの光の
成分を知らない間に学習してるってことですか。

■ええ、そうですね。知らない間に学習している。

○そこにどういった研究アプローチで迫っていかれるんですか。

■実際にこれで色が変化したときだけ特異的に応答する場所をまず探します。それと
は別に、色は同じだけど波長が変わる場所ってあり得るわけですよね。その時だけに
特異的に応答する場所を探す。それをfMRIで同定した上で、一個一個の細胞がどうい
う応答を示すのか、どこから入力してどこへ出力しているのかということを丹念に調
べていくっていう作業になるのですけども。

○なるほど。
 これは単純に不思議ですね。
 
 
*次号に続く……


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[編集後記]
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「サイエンス・メール」をご購読頂き、誠に有り難うございます。
おかげさまで無事創刊することができました。

はじめの3日間は登録者数「3人」のままピクリとも動かず、
発行人としてはかなりハラハラさせられました。
早速、廃刊の方法について真剣に検討を始めてしまったくらいです。

ですが今日、無事創刊できたばかりか、まぐまぐプレミアムの
「2005年6月MVPメールマガジン」に選ばれたとの連絡を頂戴しました。
6月MVPとは、6月1日から30日までの間、もっとも新規登録数が多かったメールマガ
ジンだそうです。

まだ発行していませんし、単に創刊したばっかりなので新規登録が多かっただけだろう
とは思うのですが、改めて、登録して頂いた一人一人の方に御礼申し上げます。

本当にどうも有り難うございます。
これから末永く、よろしくどうぞお願い申し上げます。

なお、創刊号にはつきものである本誌の趣旨ですが、
学術系メールマガジン「ACADEMIC RESOURCE GUIDE」誌から依頼を頂戴し、
下記を書かせて頂きました。

「サイエンス・メール」の創刊にあたって
    ―身の回りの不思議と、その向こう側の面白さとを。
http://blog.mag2.com/m/log/0000005669/106166167?page=1#106166167

編集後記としては長文になってしまいますが、
改めまして、こちらで転載紹介させて頂きます。

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   「「サイエンス・メール」の創刊にあたって
       ―身の回りの不思議と、その向こう側の面白さとを。」

                               森山和道


来月7月7日から新しいメールマガジン「サイエンス・メール」を立ち上げる。
現在創刊準備中である。今回「ARG」誌から機会を頂戴したので、ここで経緯
を述べ、新創刊のお知らせをさせていただく。なお、筆者がすでに自分のウェ
ブサイトやメールマガジン等で書いた内容と重複があることを先にお断りして
おく。

*

1) 「NetScience Interview Mail」について

筆者・森山和道はこれまで「NetScience Interview Mail」(以下、インタビ
ュー・メール)というメールマガジン(以下、メルマガ)の編集人を務めてい
た。

*NetScience Interview Mailのサイト
 <http://moriyama.com/netscience/>

内容は科学技術系の研究者へのインタビューだ。研究者に数時間話を聞き、そ
の内容をできるだけ、相手の沈黙や話口調も活かしながらテープ起こしし、ロ
ングインタビューとして分割配信してきた。

最初に発行したのは1998年4月30日。それ以来、7年あまりにわたって320通、
36人の研究者の話を配信してきた。

想定読者は大学生・大学院生から助教授クラスまで。インタビューでは、いわ
ゆる大御所の研究者ではなく、むしろ「小隊長」「曹長」クラスの研究者に主
に話をうかがってきた。つまり現場で活躍しており、なおかつ自分の分野だけ
ではなく、左右を多少見渡せる視野を持った人に話を聞いてきた。

読者人数は、最終号は18,000部程度だったが、最大時には25,000部近くに達し、
それなりの評価を得ていたと思う。もちろん最初は読者数ゼロから始めた。

発行人は私ではなく、科学技術ソフトウェアデータベースを事業とする
NetScienceである。つまり「NetScience Interview Mail」はNetScienceの広
告媒体であった。サイトを告知するためにアイデアはないかと言われ、私が
提案したのがメルマガを使う方法だったのである。

では広告媒体としての成績はどうだったか。かつてNetScienceは会員制のウェ
ブサイトだった時代があった。たしか2000年頃だったと思う。その会員がどこ
から流入してきたか調査が行われたことがあった。調査結果によれば、会員の
10%がインタビュー・メールからの流入だった。かなり高いコンバージョン率
だったわけである。そのため、広告媒体としての価値を認められ、続いてきた。

もっとも、それだけが続いてきた理由ではなく、担当者との信頼関係その他に
よって支えられていた部分が大きかった。

NetScience事業は買収によっていくつかの会社の間を転々としてきた。デジタ
ルウェアから住商エレクトロニクス(株)、そして最終的にヒューリンクスへ
と譲渡され、そこの方針によって、発行停止に至った。その詳しい経緯を述べ
ることは避ける。だが、発行停止は筆者が考えていた以上に急なものであった。

7年あまりにわたって配信を続けてきたので、それなりに動きもあった。イン
タビュー配信後にその研究室を訪問すると、インタビューを読んだことでその
研究室を選んだという大学院生の方がいたこともたびたびあった。また、登場
してもらった研究者の方々同士による共同研究なども始まり出していたところ
だったので、私は、もろもろ、残念に思った。このまま、ただ配信停止で終わ
りというのは……と思った。


2) 発行停止が決まったあと、有料メルマガ発行を決意するまで

さて、「NetScience Interview Mail」の発行停止が決まった後、編集人であ
る私のとるべき道はいくつかあった。

a)ノーギャラでボランティアで続ける。
b)新しくスポンサーをつのる or 探す。
c)有料メルマガにする。
d)やめる。

a)は、現実的に難しい。メルマガの発行は紙媒体に比べればローコストだ。
だがインタビュー・メールはかなりのロングインタビューであり、その文面を
いちいちインタビューイにチェックしてもらっている。そのため、必ずインタ
ビュー相手の先生に謝礼を支払っている。また、交通費・資料代など、必要経
費も発生する。そして自分自身が割いている時間、つまり人件費を考えると、
ボランティアはイコール持ち出しとなる。そういう体制では長続きしない。

素直に選ぶとすれば、あっさりやめる d)の選択肢がもっとも妥当である。だ
が、けっきょくそうしなかった理由は、一度やめてしまうと、もう二度とやら
ないだろうな、と思ったからだ。

実際にメルマガを発行している人以外は、毎週メルマガを出すのにかかる手間
は大したことないと思っていることが多い。だが、実際に毎週毎週休みなくメ
ルマガを出すことは、その内容のいかんを問わず、かなり大変である。つまり
始めるのは簡単だが、ランニングコストが高いのである。だから、一度やめた
らもうやらないだろうと思った。そして、できればやめたくなかったわけであ
る。

となると残りの選択肢は b)か c)しかない。 b)も考えた。コストは確かに
かかるが、会社単位で見れば大した金額ではないからだ。それに、心当たりも
ないわけではなかった。だが、今回、廃刊に至るまでの経緯などを考えると、
少なくとも単独スポンサーは避けたほうがいいと思った。

また、いま新規にメルマガを立ち上げて、なおかつ単独スポンサーのメルマガ
として成立するほど読者を集められるかどうか、いまひとつ自信がなかったの
で、けっきょく単独スポンサー作戦は避けた。

もちろん今でも、広告等で支えてやろうという提案そのものは歓迎している。

最終的には一部知人からのおすすめもあり、c)の有料化を選んだ。いちばん
熱心に読んでくださる読者の方に負担をかけることになる。だが、それがけっ
きょく、一番長く続けられる方向なのではないかと考えるに至った。

内容は変わらず研究者インタビュー。こういう内容だと、わざわざカネを払っ
てまで読んでくれる読者数は少ないと思われた。そのため独自発行も考えたが、
けっきょく、有料の発行スタンドを選んだ。まぐまぐプレミアム
<http://premium.mag2.com/>である。

月額は300円とした。その程度が、読者が出してくれる限界だろうと思ったか
らだ。逆に、この程度ならば出してくれるのではないか−−という淡い期待も
あった。

まぐまぐプレミアムは売り上げの4割を持っていくので、読者一人あたりの利
益はわずか180円である。わずかな読者しかないなかで、その収入の中から経
費を出していくのは、正直言って、かなりきつい。だが、管理の手間を考える
と、致し方ないと思われた。

有料化すると、読者への義務が生じる。中途半端なところでやめるわけにはい
かない。だが、ニーズがないものをいつまでもダラダラと続けても仕方ない。

赤字になったら廃刊する−−。それだけ決めて、有料メルマガ発行に踏み切っ
た。

タイトルは「サイエンス・メール」とした。たとえば「サイエンス・インタビ
ュー・メール」とする案もあったのだが、インタビューだけ配信するわけじゃ
ないかもしれないし、と考えて、あえて「サイエンス・メール」とした。

発行申請は6月3日に認められた。現在は7月7日の発行に向けて、読者登録受付
中である。

*サイエンス・メール
 <http://moriyama.com/sciencemail/>


3) 月額315円(税込み)という金額

月額315円(税込み)。年額は3,780円だ。ネット上の情報は無料の時代なので、
数字だけ見ると高いと考えざるを得ないことは分かっている。ただ、問題は、
「どの財布」から出してもらうかだ、と考えている。

というのは、3,780円という数字だけ見れば、居酒屋で1回飲み会をやったら確
実に消える金額でしかないからだ。315円など、コーヒー一杯分にもならない。
ちょっと新宿や池袋まで行ったら、その往復交通費で簡単に消えてしまうので
ある。

ネット上のコンテンツ代として見ると出しづらく感じるとしても、実際にはそ
の程度の金額なのだ。つまり「○○代」という形で用途が変わるだけで、金額
の心理的負荷が増減するのである。

では、どの財布から出してもらえばいいだろうか。

私は、「書籍代」として考えてもらえないだろうかと思った。最近、書籍の値
段はどんどん上がっており、3,780円だと、ちょうど分厚い科学書の値段と同
じくらいだからだ。実際、インタビュー・メールはロングインタビューなので、
年間のテキストの分量はおそらく書籍2冊分程度はあるはずなのである。

また、内容から考えても、読んでいる読者の方にもそんなふうにとらえてもら
えるとちょうど良いのではないかと思った。

いま、この文面を読んでくださっている読者の方々も、本を一冊買うような気
分で登録していただければ幸いである。


4) 「サイエンス・メール」の趣旨 1. 楽しさを伝えたい

インタビューという形式にこだわっているわけではない。だが現時点では、自
分がやりたいこと・伝えたいことを読者に伝えるためには、この形式がベター
だと思っている。

ではやりたいこととは何か。

いわゆる理系離れ云々が言われはじめて久しい。それで毎日新聞などは「理系
白書」<http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/rikei/>などを連載して展開
している。最近は少し流れが変わってきたようだが、2年ほど前は、いかに理
系が苦しいかという話を繰り返し掲載していた。

そのとき私は、あれはなんだか違うんじゃないかと感じた。理系に興味を持っ
てもらいたいと考えるのであれば、理系の楽しさを伝えることがまず第一だと
考えた。

身近なところで言えば、他人の笑顔を見ると、こちらも楽しくなる。そんな経
験は誰しもしていると思う。何かに一生懸命に打ち込み、喜びを感じている人
の顔は、他人を引きつける。もしそのジャンルに人を呼び込みたいのであれば、
その人が何を楽しいと感じているのか、それをきちんと伝えるのがもっとも正
当な方法である。

すなわち、科学技術分野に興味を持ってもらい、人を呼ぶのであれば、研究者
の人が何を楽しいと思っているのか、どんなことを考えているのか、どんな問
題意識を持っているのか、それをできるだけ正確に伝えることが重要なのでは
ないか。つまり研究者の笑顔を伝えることが最も大事なことではないかと考え
ている。


5)「サイエンス・メール」の趣旨 2. 複雑化する社会問題に向き合うための教養

いっぽう、そもそも、なぜ科学技術に興味を持ってもらわなくてはいけないの
かという意見もあろう。

その答えは、私に言わせれば、現代がもはや「待ったなし」の時代だからだ。
社会を取り巻き解決を待つ問題群は、複雑化の一途をたどっている。

たとえば先進国は飽食に満ちているが、飢えている国もまだまだ数多い。食糧
問題はより広い目で見れば環境問題に包含されるが、環境問題はけっきょくの
ところ人口問題である。貧困のなかで増え始めた人口は、さらなる食糧不足や
環境の悪化をもたらす。だが、貧困から脱出したいと思わない人間はいないの

、人口増大ペースを抑えつつ、社会全体を経済成長させていかなければならな
い。ところが経済成長は最初は逆に人口増大をもたらし、公害などさらなる環
境問題を引き起こす原因となる。さらに経済が成長していくと、今度は逆に少
子高齢化や人口減少が起きる一方で、経済格差が生まれ、社会の不安定化のき
っかけとなる。おまけに人口が減っても一人当たりのエネルギー使用量は増え
るので、環境への影響はさらに大きくなっていく−−。

このように、現代社会においては一つの問題を解決すると、それが逆に別の問
題を引き起こすという場合も多く、複雑にからみあったリスクがいくつもいく
つも重層的になっている。現代社会の問題は、一つの要素だけ見ていても解決
できない問題ばかりなのだ。

もはや、次から次へと出てくる問題をもぐら叩きのように潰していくようなや
り方では駄目だ。社会全体を一つのシステムとして眺めて、システム全体に対
して問題解決のアプローチを試みる必要がある。

ところが問題解決に取り組むときの貴重な足がかりとなる科学技術は細分化の
極みにあり、知見はバラバラになってしまっている。科学技術だけではなく、
他の社会学、経済学などの分野でも事情は同様だ。

しかしながら、現代のような時代にこそ学際的な知見が必要であることは言う
までもない。様々なジャンルの知識を「楽しむ」ことができるレベル、すなわ
ち当たり前の基礎教養として持った人々が、智恵を寄せ合い議論することで、
解決法を見出していかなければならない。もちろん、科学技術だけがすべてで
はないが、その一部であることは間違いない。

私はこのように現代社会とその問題をとらえている。そのなかで、科学技術に
関する教養、という観点を持ちつつメルマガを運営してきたし、これからも運
営していきたいと考えている。

まあ、いつもそれほど堅苦しいことを考えているわけではない。
基本的には、身の回りにあるちょっとしたことに関する不思議、その向こう側
に広がる知識や世界の面白さをちょっとだけ感じてくれればいいと思っている。

皆様のご支援を頂戴できれば幸いである。

*「サイエンス・メール」編集発行人・森山和道
 <http://moriyama.com/sciencemail/>


《筆者の横顔》
森山和道(もりやま・かずみち)。1970年生まれ。愛媛県出身。広島大学理学
部卒業。NHKディレクターを経て、現在はフリーのサイエンスライター。インプ
レス「PC Watch」、「日経サイエンス」「月刊アスキー」ほかで書評やコラム、
取材記事の連載を持つ。
<http://www.moriyama.com/>
___________________________________

次号からはまた改めて編集後記を書かせて頂きたいと思います。

最後におまけの情報を一つ。今週末です。

7/9日 ホンダウエルカムプラザ青山
ASIMOスペシャルイベント
http://www.honda.co.jp/welcome-plaza/event/
昨年12月に記者公開された「ASIMOプロトタイプ」が、初めて一般の前にて
お披露目されます。一日3回。
ひょこひょこと走るASIMOの姿が見たい人は、青山にどうぞ。

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ScienceMail Vol.001  2005/07/07   発行 
発行・編集人:森山和道【フリーライター】<moriyama@moriyama.com>
ホームページ:http://www.moriyama.com/sciencemail/
*本誌に関するご意見・お問い合わせはmoriyama@moriyama.comまでお寄せ下さい。
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