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風 俗 嬢 、 だ け ど 処 女 。 ―サンプル版―
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ま え が き
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私は私小説が嫌いだ。
いや、別に私小説を執筆する作家を批判したいわけでもなければ否定するつも
りもない。私小説であってもフィーリングが合えば楽しく読めるし、完全な創
作であってもどうしても好きになれない作品もある。
私が嫌っているのは、自分が私小説を書くことである。
私の家は特殊な家業で、家族構成も少し変わっている。
差別や偏見の対象となる類いの、重い病を患っている人もいる。
「私小説を書いてほしい」と言われたことは一度や二度ではないが、私という
人間を構成する様々な記憶をありのままに書き記せば、必ず人を傷付ける。そ
の作品が件の病人の目に留まれば、症状を悪化させる恐れもある。小説を書く
際に、実在する身近な人物や自分自身の体験を作品のモチーフにすることはあ
るが、そのような場合には必ず脚色を行うようにしている。
とはいえ、自分の見てきた世界について、嘘偽りなく記述しておきたいと思う
こともある。私は処女の身で風俗嬢になったが、人に話しても信じてもらえな
いことが多い。それだけに、自分の見たものを記述して残したいといった気持
ちも強いのである。
そこで、ネットの匿名性を利用し、名前と文体を変えてメールマガジンを発行
することにした。ここなら自分の見てきた世界をありのままに記述することが
出来る。
ただし、私の勤務していた店や当時の源氏名を特定されないために、多少の脚
色はお許しいただきたい。脚色といっても、A店での出来事とB店での出来事
を入れ替えて書くといった程度のものであり、目にしたことのないエピソード
を捏造することはないとお約束する。
それでは、サンプル版の本編をどうぞ。
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第零回「処女でフーゾク入りした私、私をとりまく壊れた男」
私の母親は古い人間だった。そして、偏った人間だった。
初めて彼氏が出来たのは高1の時だったが、一緒に歩いているところを親戚の
おばさんに見られてしまい、おばさんから話を聞いた母は、「彼氏なんてまだ
早い。恋人を作るのは大人になってからにしろ」と激怒した。だから、親には
相談出来なかった。告白されて何となく付き合い始めた、初めての恋人モトヤ
(仮名)。実は彼はDV男で、別れ話を切り出すとストーカーへと進化を遂げ
た。
当時はまだDVなどという言葉はなかったし、ストーカーという言葉もあった
かどうか分からない。毎日のように「あー、彼氏が欲しい。手を繋いで歩いて
いるカップルを見ると殺意が湧いてきて、二人の間に突入して邪魔してやりた
くなる。あんたら、抜け駆けするなよ?」などと言っている女友達には、男の
ことは相談出来ない。モトヤの言動が「マトモな男」からどれほど逸脱してい
るのかを知るすべはなく、ストーカーと化した彼の待ち伏せを回避するために
遠回りして帰宅すると、「遅い。またあいつと遊んでいたのか」と顔をしかめ
て吐き捨てる母。
相談に乗ってくれていた男友達のヒロ(仮名)から「付き合いたい」と強く言
われ、流されるまま交際を開始したが、彼はある種の異常性を抱えていた。
突然、何の前触れもなく、私の一挙一動に対して罵声を交えながらダメ出しを
開始する。ヒロは一方的に喋り続け、私は自分がどれほど出来の悪い人間なの
かを知って愕然となり、これほどまでに人様の気分を害していたのかと悲しく
なる。10分以上喋り続けたところで彼ははっと我に返り、「ごめん。俺はいき
なり全てが憎くなって身近な人に暴言を吐いてしまう癖があるんだ。この前も
母親に暴言を吐きまくって泣かせてしまった。本当にごめん。こんな俺だけど、
本当にアゲハのことが好きだから、見捨てないでくれ」。私には何も言えない。
しかし、そんなことは序の口だった。
いつものように回り道をしながら家路を急いでいた私は、駅前で待ち伏せをし
ていたモトヤに捕まった。私がそこを通ることは、ヒロしか知らないはずなの
に。元彼の執念深さに慄然とする私に、驚くべき真実が告げられる。
なんと、私に関する様々な情報をヒロがモトヤに流しているというのである。
それだけではなかった。ヒロは、私がモトヤと交際していたときから、私と付
き合っているのは自分だと吹聴し、モトヤの嫉妬と猜疑心を煽っていたという。
翌日、ヒロ本人に直接確認してみると、彼はぷっと吹き出した。
「あぁ、あいつねぇ。さあねえ、どうかなぁ?」
言いながら、けらけらと笑い続ける。
大人になってから、人格障害という言葉を知った。メンタルヘルス関係の知識
を得るうちに、ヒロもまた精神に異常を抱えていたのだと知った。
しかし、何の知識もない当時の私は、「男とは、そういうもの」という認識を
持った。男は気に入らないことがあるとすぐに暴力を振るい、暴言をとめどな
く吐き続け、女を自分の所有物のように扱う生き物なのだと思った。男と付き
合うなんて面倒なだけだと思った。その後も交際を申し込まれることはあった
が、男から好意を向けられるだけで苛立ちを覚えるようになった私は、彼氏を
作らず同性愛に走り、やがて風俗嬢になった。
※
……ここまで読んで、「彼氏が二人もいたのに処女だなんて有り得ない」とか
「父親や男兄弟は、男を見る際の判断基準にならなかったのか」と疑問に思っ
た人もいるだろう。
確かに、モトヤとはラブホテルに入ったことがある。セックスを渋ると浮気を
疑い暴力を振るう彼に対し、避妊を条件にしぶしぶ承諾したのだが、チェック
インしてすぐに後悔した。非常に嫉妬深い彼は、「コンドームがアソコの中を
直接こするのが許せない」と言って、避妊を拒んだのである。
一方、私は妊娠することを極度に恐れていた。その恐れ方は神経症的だったと
言っても過言ではない。癇癪持ちでいつも苛立ち、子供に八つ当たりばかりし
ていた母を見て、子供を産み育むことは耐えがたい不幸だと思ったのだ。私は
全く濡れなかったが、彼は「○○先生(注:レイプ物をメインに描いていたエ
ロ漫画家の名前だと思われる)の作品ではこうしている」と真顔で言って、無
理矢理挿入しようとした。
しかし、幸か不幸か、モトヤは挿入すべき穴の位置を知らなかった。私の股ぐ
らを観察した彼は、尿道口を膣穴だと思い込み、そこに挿入しようとしたので
ある。私は痛みに絶叫した。それに対する彼の言葉は、「初めてでもないくせ
に痛がるな」。
彼は、私には処女膜がないと言った。
尿道口を観察して、そう判断したようだった。
この一件は、NOと言えない私に彼との別れを決意させた。周囲の友達が口を
揃えて素晴らしいことだと話す、しかし自分には何故素晴らしいのか理解出来
ない「男の子と付き合うこと」がどのようなものなのか知りたくて、試しに付
き合ってみたのだが、「素晴らしいどころか地獄である」との結論が導き出さ
れた以上、交際を続ける理由はなかった。
二人目の彼氏であるヒロに関しては、交際開始から一週間も経たないうちに私
が逃げ出したので、セックスどころかキスすらもしなかった。だから、私は処
女だった。「それだけ汚れているのに処女を売りにするなよ」と思った人もい
るだろう。そのツッコミは正しいが、現実的ではないと思う。どれほど心身が
汚れていようと、女性器に膜さえついていれば、処女として重宝され、或いは
敬遠されるのだ。
※
一方、家庭内の男性についてだが、私の父はとても気難しい人で、他人との接
し方を知らず、いつも自宅の奥に引きこもって本を読んで過ごしていた。
「お父さんはよその人みたいだから、どのように接すれば良いのか分からない」
と正直な気持ちを口にして、母を怒らせたことがある。私にとって父は、存在
感のない人だった。だから、男を見る際の判断基準にはならなかった。
家庭内の男性としては、父の他には弟がいたが、彼に関しては論外だった。
アスペルガー症候群の弟には羞恥心というものがなく、家族が行き来する廊下
にエロ本やAVを山積みで放置、気に入ったものがあれば大鞄に入れて肌身離
さず持ち歩く。エロ本には紙が挟まっており、そこには自らの手によるあられ
もない姿の女の子のイラストと、私の名前が記されている。
性的な視線に晒されるのは、私一人だけではない。「うー、うー」と奇声を上
げながら、まだオムツの取れていない末妹の顔を舐め回したかと思うと、彼女
を背後から抱きかかえ、その尻に己の股間を押し当ててカクカクと腰を振って
見せる。へらへらと笑いながら口を半開きにし、姉や妹の目前で幼児相手にセッ
クスの真似をするその姿は、異常の一言に尽きた。
しかし、当時はアスペルガー症候群に対する社会的認知度が低く、弟を溺愛し
ていた母は、自分の息子に障害があるなど決して認めようとしなかった。
後に弟は統合失調症を発症し、幻聴と会話をしながら円を描くようにぐるぐる
と部屋の中を歩き回ったり、事実無根の妄想を根拠に暴力行為に及ぶなどといっ
た、数々の異常行動に出た。しかし、警察沙汰を起こして精神鑑定にかけられ、
閉鎖病棟に強制的に入院させられるまで、愚かな母は誰に何を言われようと自
分の息子が「普通」であると頑なに信じ続けていた。
尊敬できる男性像の不在と、男の欲望に対する憎しみ。
しかし、私に内在する「フーゾクに走る女」の資質はそれだけではなかった。
私の家は貧乏で、「今月はたったこれだけで家族全員が食べていかなければい
けない」とぼやく母に財布の中を見せられることもしばしばだった。塾の講師
から「合格は確実」と太鼓判を押されていたにもかかわらず、家が貧乏であっ
たがゆえに名門私立中学校への進学を諦めなければならなかった私は、金を稼
ぎ使うことに快感を覚え、高校生の頃から幾つものバイトを掛け持ちしていた。
私には、「フーゾクに走る女」の素質が十二分にあったと思う。
しかし、進学を諦め悔し涙を流したときも、二人目の彼氏と別れ「男なんてこ
りごりだ」と思ったときも、自分が風俗店で働くことになるなど夢にも思わな
かった。風俗店とは、借金で首が回らなくなった不幸でワケアリの女たちが最
後に行き着く場所だと勝手に決め付け、自分とは無関係の世界だと思い込んで
いたのである。
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あ と が き
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こんな私がどのようないきさつで処女のまま風俗嬢になり、フーゾクでしか働
けないような状態になってしまったのか。そして、どのようないきさつでフー
ゾクから足を洗ったのか。
それは、本編をご覧ください。
・…━━ ☆
●実際に配信されるマガジンの内容について
フーゾク入りするきっかけになったテレクラのサクラを皮切りに、ピンクサロ
ン、ファッションヘルス、ソフトSM専門店、ストリップ劇場内のランジェリー
パブ、デリヘル、盗撮専門アダルトサイトなどについて、店内の様子・接客内
容・ユニフォーム・店長の人となり・客層・女の子のレベルや人間関係・給与
の実態・雑誌の取材の裏話等を処女ならではの視点で書いていきます。親バレ
による修羅場や家庭崩壊、ストーカーと化した客の話も全てお話しします。
以上が、現時点でのマガジンの内容です。ただし、購読者が増えれば文章量を
増やし、コラム・エッセイ・小説のいずれかを追加掲載します。
風俗モノですが、老若男女問わず読めるものにしたいと思います。
フーゾクが好きな人も嫌いな人も、是非ご購読ください。
よろしくお願いいたします。
(姫園アゲハ)
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奥 付 け
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メールマガジン「風俗嬢、だけど処女。」サンプル版
発行日:2008年4月18日(金)
発行者:姫園アゲハ
メール:ご購読者様だけにお教えします
ブログ:http://blog.livedoor.jp/ageha_for_zero/
※姫園アゲハの素性に関するお問い合わせはご容赦ください。
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